イグナシオ・ロデス ギターリサイタルを聴いて

4月19日、和歌浦アートキューブ・キューブAでスペインのギタリスト、Ignacio Rodes さんの演奏を聴きました。

未就学児の娘の世話のため前半のみの鑑賞でしたが、そこで感じたことを素直に書いてみます。

まず会場のアートキューブ。ギャラリー展示や作品会、音楽などいわゆる多目的な活動スペース(キューブ)を提供している場所ですが、今回は収容人数の多いキューブAで行われました。
僕自身、アートキューブは何度か演奏会で使わせてもらっているのですが、音の響きからAは避け別のキューブを使っていました。
この場所ではたしてちゃんとギターの魅力が伝わるのか、一抹の不安はありました。

予想どおり本番ではダイレクトではありませんが遠くからマイク2本を立てPAで軽く音量アップさせていました。
ただ演奏者用モニターが無いので、おそらく聴くものより弾いている側が辛くなる(自分の音が聞こえない)環境だったと思われます。和歌山にも良いホールがあればいいのですが、ここはない物ねだりしても仕方ないので。

さて会場には120人ほどでしょうか、多くの人が会場に詰め掛けていました。企画運営の方の努力があってこそ、僕の知り合いも何人か手伝いに行っていましたのでホッとされたことと思います。

会場が響かないことが分かっていたので最前列に座って開演を待ちます。

舞台に現れたロデスさんは、さすがの舞台マナー。こういうところを日本の人は見習ってほしいなぁ。髪の毛が多くていいなぁ。。
ただちょっと会場の照明に落ち着かない様子。

1曲目、ドビゼーの組曲からスタート。(すべてのプログラム詳細は最後に書きます)

この中のいくつかの曲は映画「禁じられた遊び」でも使われていますので、マニアック+エンタという良い選曲だったかもしれません。聴いてた人が気づいてるかはしりませんが(笑)

最初の一音で、非常にクリアで強靭なタッチの持ち主だと感じました。甘さより、「分離した透明な音」。結果論ですがこれはぜひちゃんとしたホールで聴きたかった。
舞台では、おそらく、たぶんおそらくですよ。最初の一音でこの会場が「やりにくい」と感じたと思います。指に緊張が現れたように見えましたし、
それを振り払うように目を閉じ集中し始めましたから。
リハーサルでわかってるつもりでも、実際にお客さんが入ると全然違う響きになる。良いホールはその落差が少ないのですが、ここではロデスさんほどのキャリアでも、いやそのキャリアだからこそかなり違和感を持ったと思います。

バロックギターの奏法であえて表現を試みていました。右指の軽快なさばきが気持ちよくドビゼーの作品に反映されていました。
使用楽器はロマニロスということで、音の粒立ちがすばらしい。ただこの会場ではダイナミックレンジが伝わってこない。
おそらく、おそらくですよ(笑)、舞台上では普段より大きな音で弾かざるを得ないのかなと。それによってレンジが狭められてしまったのが残念。
少し指にもどこかトラブルを抱えてらっしゃるように(右親指か中指)見えました。
しかしこの曲はもっと落ち着いた雰囲気で弾いてほしかったし、聴きたかったですね。もったいない。

2曲目、バッハの無伴奏ソナタ3番からフーガ。

この難曲をどう響かせてくれるか、今回のコンサートで一番の注目曲。この曲をちゃんとギターでできる人って少ないですから期待値は高かったのですが、最初の曲でわかった環境でどう表現すべきか、これまたロデスさんも大変だっただろうなぁ。
表現のツールから「弱音」禁止の縛りを受けてるわけですから。
そもそも個人的には、こんな複雑な二重フーガをギターで弾くことが無謀、相当な分離表現がないとできない、そんな曲なんです。
それを縛られた状態で。。。心中お察し申し上げます。。

そんな勝手な心配を他所に、ロデスさんは結構速めのテンポでテーマを弾き始めました。テクニックは申し分なくこの複雑なフーガを構築してきます。
しかし声部が立体的に広がってこない。これが会場の音響の影響なのか。音色変化による遊び、や歌心、こういったものが随所にちりばめられているにも関わらず、響きがモノラルのスピーカーからまとまって出てきてる印象。
第2テーマが出るころには「曲の長さ」を感じてしまいました。残念。

それにしても、さすが一流のプロ。暴走・破綻を食い止めるブレーキシステムをちゃんと音楽の中に作っています。それをやると音楽の流れに歪みが生じるのですが、最小限な仕組みで作動させていました。だから聴いてる人はまず何もわからないでしょうね。

ロデスさんはおそらく、繊細でクリアな表現を理想とされる音楽家だと思います。今回の会場でこの曲を選曲したのはやはり無理があったのかもしれません。聴いている人も「見事に弾き切った」という音楽以外の物理的表層的感想で終わったのでは。もったいない。

前半最後はバウティスタという20世紀初頭のスペイン作曲家の曲。

まったく初めて聴く曲で、やはりこういう曲を持ってきてくれるところが嬉しいですね。スペイン大好きギター関係者が多い日本で、こういった曲が演奏されなかったということはそれなりの理由があるのでしょう。
そういう日本の事情を無視してやってくれるところが海外の人を日本で聴く楽しみの一つでもあります。

そしてバッハを弾き終わった後でもあり、ようやく会場の雰囲気にも「諦めがついた」時間帯、ギターがロデスさんと一体になってきたようです。

今回、前後半どちらを聴くか考えたとき、これまで書いた会場コンディションがもたらす影響が予想されたので、妻には乗り始めるであろう後半を譲りました。他のお客さんも「後半のほうが良かった」と感想を言われていたので、みなさんも満足されたのではと思います。

このリサイタルを聴いて感じたのは、今後もし僕が有望なギタリストを招待するとき、和歌山での会場選びに苦労するだろうなぁ、ということでした。

当日プログラム

ロベール・ドヴィゼー:組曲ニ短調
バッハ:フーガハ長調BWV1005
フリアン・バウティスタ:前奏曲と踊り

ファリャ:ドビュッシー賛歌
クインティン・エスカンブレ:ワルツとサパテアード
サルバドール・バカリッセ:前奏曲・間奏曲・パスピエ
トリーナ:タレガ賛歌。セビリア幻想曲

アンコール:バリオスのガボット

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