金谷幸三流花伝の書14

少し話が基礎から飛んで、後ろから数えたほうが早い内容です

レッスンでは上級者以上の生徒さんに対してかなり音楽的な表現というものを勉強していただいています。
ワンフレーズでいうと「いかにそれを表現するか」。
究極の目的ですね。
で、実際にこれを体得理解した方のみ「金谷幸三門下免許皆伝」と相成る次第です。暖簾分けも致します(笑)

さて、その表現に関して常々お話しているのが

実践的理論!

ちょっと専門的で難しいかもしれませんので、ここでは軽い気持ちで読み進めてくださって結構です。
ただ上級レッスンでは徹底的にご指導申し上げております(笑)

机上のお受験対策、知識マニア向けの音楽理論を知ってたところで頭でっかちなだけ、なんら自慢にもなりません。
まぁ日本の教育だとそこから抜けることは無いのでしょうが、大学レベルでもいまだに・・・ですからね。
もしこれから話すことがわからなくても、それは仕方ないかも。

別の記事でも書きましたが、例えば拍子記号。これが「小節内に四分音符が3つ」なんて考え方が音楽にはなんの関係もない
くだらないことだと書きました。覚えていますでしょうか。
なんとかそこを乗り切って「3拍子で弾くんだ」と理解したとしましょう。
さぁ、ここからが実践理論「どう演奏すれば3拍子が表現できるんだろう」へと繋がっていくわけです。
ただ、まだこれはほんの入り口、

次にこの世にあるいろいろな「3」をどうイメージしていくのか。
聴いている人に「あ、これは3拍子の曲なんだ」と思わせても仕方ないのです。聴き手の「頭でっかちな知識」を呼び覚ましただけで、
これまた音楽とは程遠く、学者の世界です。

大雑把に言うとまずワルツやマズルカなどの踊りの違いとかがあります。(ただ単に世の中の3角形を想像してもいいです)。
踊りが違うんだから表情も違うはず、振付が違うはず。
まずはこのレベル。
そしてここからが大切。
この曲においてなぜ作曲が3という数字を選んだのか、想像する必要がある。
そうすれば、同じワルツでも
「軽快な社交的ワルツ」「優雅ながら孤独なワルツ」「悲しみに暮れた不安なワルツ」など様々な形容詞とともに状況を
「創る」ことが出来ます。

そして、その創り上げた情景を聴き手にイメージさせるにはどういう演奏の選択があるか

これが「音楽表現」です。

つまり拍子記号を見たときに「何を伝えようとしているのか」さらに「これをどう表現するか」。そこまで考えてください、
というレッスンです。みなさんお疲れ様です(笑)

しかし何度も苦言を呈しますが、この「数えれば終わり」という表層的な教育によってアーティストとして大切なものを失ってしまっています。
日本人こそそこに気づかないと!

別の例で考えてみましょう。

たとえば「音程」。インターバルですね(あんまり音楽用語を英語でいうのは好きじゃないんですが)。
「次の二つの音の音程を答えなさい」


楽典をかじったことのある人だったらわかりますよね。そう「数えればいいのですから」。
得られる答えは「減五度」。

で、だから?(苦笑)

実践理論で大切なのは、
1.なぜこの場所に、作曲家は多くあるインターバルのうち減五度を選んだか?
2.それによって得られる効果は何か?(何を伝えたいのか)
3.それを表現するため、その音程はどう演奏されるべきなのか(ディナーミク・アゴーギク・間など)
4、その表現によって聴き手の心をコントロール(想う情景をイメージさせたり)できたか。

さらに知るべきなのは
調性音楽において「すべての音は他者(周りの音)との関係で成り立っている」。これ大事!

ですから先ほどの減五度も、直前に何の音程があるか、単音なのか和音なのか、そもそもその調においてどのくらいの重要度なのか、
などによって表現がそれぞれ変わる。変わらなきゃおかしいのです。

アコギの方にもわかりやすい例でいいますと、
ドミナント7thのコード、まぁ「終止形における属7和音の役割」と言えば難しいんですが(笑)、
そのドミナントがなぜ大事かと言うと(T.D.SDとかとく使うと思います)その性質が、
調性においてトニック(主音)への回帰再現を強烈に望む音だからです。だからC-G7-Cってのが自然に使われる。

さぁここまでが知識です。

実践理論では、ドミナント7がそういう性質であるなら、それが目立てば目立つほど「回帰したい期待は高まり」、
トニックに戻ったときの「安定感」がさらに大きくなるわけで、となるとこの音はミスするわけにはいかない。
少しテヌートさせて焦らしてみるか、とか、大げさに弾いてみるかとか。
表現テクニックはいろいろあるでしょうが、この音は周りに埋もれさせてはドミナントを使う意味がないということ。
強く弾くなり、アクセント入れるなり確実に演奏する。

そうすることで初めてトニック前にドミナントを入れてきた理由が分かるのです。

これが実践理論

今述べた終止法なんかもすべてこれ。
形式学も和声学も対位法もすべて、時にはタイトルまで、それがどう表現に直結していくか。

楽譜に書かれていることを読み解くとはこういうことなのです