音楽のレッスン2「誰かが言ってた」

ギターの世界にとどまらず一般にも言える「上辺だけの教育による理解の欠如」その思い込みについて何度かに分けて考えてみようと思います。

2.「調性感」

まるで都市伝説のようにまことしやかに語られることの多い「調性感」、例えば同じ長調でもニ長調は明るく繊細だが
ホ長調は高貴で堂々とした様子を感じる、とかいった例のあれですね。(文例は適当です)。

今回はその調性感に関する思い込みの例として分かりやすく「変ホ長調」を考えてみましょう。

巷間で「英雄の調」と呼ばれるこの調、フラットが3つも(!)あるのでギターでは馴染みが薄いためか、たまに出てくると嬉々として「英雄」を語り始めることがあります。「これは英雄の調と言ってね、凛としてそれこそ英雄らしく堂々と弾かなくちゃだめだお」みたいな。

確かにオーケストラではホルンなど金管楽器が鳴らしやすい調のため好んで使われて、なおかつ金管の堂々とした音が英雄の凱旋にはぴったりなのかもしれません。
ただそれはオケの話。
ギターではフラットによって一番なる開放弦、6本のうち4本、3分の2を封じられてしまう悪夢の調(笑)なんです。
つまり、一般的に語られる調性感っていうのは実は非常に楽器特有の事案なんですね。
楽器によって鳴りやすい響きは「力強さ、輝き」など、そうでないものは「平穏、安寧」へと向かうと考えればいいでしょう。

ギターでは低音に開放弦が利用できるAもしくはEとなりますが、Eが下方向からのドミナントによる終始が出来ないので、
イ長調が一番「華やかで輝き」イ短調が「深い直情的な悲しみ」に使われます。
ギターの世界ではAこそが英雄の調なのです。(ちょうどジュリアーニも英雄ソナタをAで書いてますし。)
一方Eは上方にサブドミナントがありますので派手なようでいて「アーメン終止」でおなじみの変格終止扱い、つまりどこか宗教的な優しさを内包してるのです。

ニ調は6弦をドロップDにした場合、無類の安定感を誇る重さが表現できますが、そうでない場合は逆に軽やかな響きになります。
もちろんこれらはあくまでも個人的な形容ですが、響きから判断すると当たらずも遠からずといったところでしょう。

ギターの場合、低音の開放弦の関係でイ長調をマックスに、フラット方向へ向かうにつれて穏やかになるということです。
実際に転調表現の折にはぜひ参考にしてみてください。

ちなみに僕の場合、何も調号が付かない「ハ長調」は「素朴で牧歌的な表現」になります。単純で何も考えない様が「童心」「田舎」に通じるからかもしれません。

というわけで、音楽の父バッハ(そんなお父さんを持った覚えはないけど)のBWV.998のプレリュード・フーガ・アレグロを原調がEsだからと言って「堂々と輝かしく」弾かないでください。
まず楽器が違いますし、英雄の調はベートーヴェン以降の呼び名ですし、そもそも当時は415チューニング、半音低いので。

余談ですが、昔、11弦ギターでバッハのシャコンヌをそのまま弾いたときに聴こえる「ヘ短調」の響きに違和感を持たれた方がいらっしゃいました。
ただギターは実は実音が記譜よりオクターブ低い移調楽器なので、普段から原曲を8度も下げて弾かれることの違和感はスルーだったみたいです(笑)

なにごとも実践臨床を伴わない知識にとらわれると本質を見失うというお話でした。

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