花伝の書

金谷幸三流花伝の書4

和歌山のギタリスト金谷幸三による実践的ギター講座(SEO対策ですww)

■ポジションを素早く柔らかく移動する■

指を離すことは「次の準備」のためだけではありません。
1.もちろん次の準備に向かうため。
2.結果として弦を押えないことで力の節約。

そして
3.実はポジション移動を素早く行うため

これも非常に大切なことです。音楽を流れるものにするためには移動による空白を極力避けるべきで、
このポジション移動のノウハウは教則本の最初に持ってきて良いのではないか、と思うくらい僕の中で重要視しているテクニックです。
この移動速度が上がれば、それだけ前の音を粘ることが出来ますし、なによりも余裕が生まれます。

そこで教室では次の大原則を徹底しています。
「ポジションを移動する直前には力を抜かなくてはいけない」。恒例の「しなくてはいけないシリーズ」です(笑)

多くの人は力で強引に移動しようとします。でも力が入ったままだとスピードが上がりません。ゴルフのスイングしかり、野球、テニスなどと同じで力みや重心固定は実は速度アップには禁物ですよね。実際のやり方は後述するとして、まずは力を抜くこと!
この意識をしっかり覚えてください。

一番楽なのは開放弦を利用してその隙にポジション移動をする。音もつながりやすいし、逆に開放弦が出てきたら移動のチャンスと思ってください。
次は1本だけ押さえている状態、そして2本3本。4本が一番力が入った状態で、直前にセーハなんて極みです(笑)、早い段階で解除しなくてはなりません。

ただいつでも楽な開放弦が使えるとは限りませんし4本押さえた状態から移動もあるでしょう。しかしやはり原則は生きています。
仕組みは、4本の指のうち残さなくてはならない優先度の高いものだけにして、結局力が抜けた状態を作るということです。
優先度は基本的にメロディー、または最後の音が高く、ほかの音はこれまでのテクニックを利用して順次離していきます。
そしてせめて1から2本にしてからサッと移動します。
とくに低音弦の指が早めに離れることで無駄なノイズも軽減されるので一石二鳥です。

ギターテクニック全体に言えることですが、移動のコツは「指先で移動を行わない」こと。

あとネックを低めに構えるタイプの人に多いのですが、脇を開いて手首を移動させてしまいがちです。でも運動的にはこの動作、けっこうきついはず。胸の筋肉も使っていますし。人間の肩の関節はおそらく手を前後に稼働させるほうが楽なはずです(歩いたり走ったりするときのように)。
つまりこの脇、肘という大きな筋肉を人間の得意な可動方向に動かし、それを軸に手首を振ります。こうすることで指先は鞭の先のようにしなやかに鋭く動きます。大元を動かせば先端は大きく動くわけですから。
またローポジションからハイに移るときは腕の重み(5キロほど?)を利用して自然落下させます。脱力の話でも出てくると思いますが自然落下の速度ってけっこう速いんですよ!

さてこの大きな筋肉を使う、すごく大事なことで、右手にも左の普段の押弦にも利用します。
ついつい鍛えがちな「指先で何かする」のは一番最後、最終手段だとお考えください。

簡単な実演ビデオはこちらです。

ポジション移動のさらに細かな原則はまたいずれ。

金谷幸三流花伝の書3

金谷幸三による実践ギター講座

■ごまかして楽をしましょう■

繰り返しますがレッスンでは次の「真理?」に基づいて進んでいきます。

1、ギターはそもそも不完全な楽器なので「あんまり無理をしない」。
どうせ完璧には不可能なことなら最初から完璧を目指さない、そのことに関して努力をしない。

2.ギターの音はすぐ消えていく。音そのものより消えゆく余韻(響き)を大切にする。ギターはそういう宿命を持った楽器なんだと諦める(笑)

これらが大前提。基本の基本的考え。

そして次に大切なこと。
前に人間は「ファジー」である、と書きましたがそれに関連して、

3.時間とは「過去の記憶と未来の予測のもとで成り立っている」!!!。

と簡単なことを難しく言う典型的な文章ですが(笑)

つまりここで言いたいのは実際に何が起こってるかではなく、刻々と変化する記憶の中でどうなっているかが大事。
例えば「え?それってさっき言いませんでした?おかしいなぁ、ちゃんと言いましたよ」と言われたら「あ、そうかもしれない。うんうん言ってた、と思う」という流れに持ち込めばいいのです。
そこに過去の記憶になる前段階「予測」の段取りをしっかり作っていると、いい意味での「思い込み」で勝手に脳内で物語が出来上がる仕組み。
例えば「おはようございます!」の内「おはようござい」くらいまでしっかりと自然に発音していたら、あとは小声でもにょもにょと「あふ」と言ったところで、記憶では当然のように「ちゃんと挨拶した」となるはずです。
この原理をまぁ演奏にも利用しようということです。

奏者の思うように予測させ、奏者が願うような記憶にすり替える
これは僕の演奏で一番大切にしていることです。人の心や呼吸、心拍数、付随する感情を操る、まぁほとんど詐欺師と同じやり方です(笑)
昔はやったメンタリストみたいなものでしょうか。

では前回でもやった「指のリリース」で実践してみましょう。

ギターは複数の声部を扱える数少ない楽器ですので、どうしてもそれぞれの声部を聞かせたい時があります。
でも不完全ですのでテクニック的に無理か、ひじょうにきつい労力がいる場合、スパッと諦めて上述の心理テクニックを使うことが有効です。
簡単に言うと、マジックの「ミスディレクション」

一つの音がどうしても繋がらず切れそうなとき、その近辺で別のほうへ注意をそらし、記憶の中で当然行われたものにしてしまうわけです。


前回でも使ったこの曲の場合でも、ごまかしたいあたりで別のもの、ここではアルペジオ伴奏に音楽的動きを与え、聴く人の注意を伴奏に移します。
そしてその間にこっそり指を離してしまう。
ただまったく手品と一緒で、その動きがぎこちなかったり不自然な音楽だったら目立って失敗しますが(笑)
大切なのはテクニックでごまかすのではなく音楽でごまかすこと。音楽表現が自然にできるスキルが必要です。
まぁそれが難しいのは分かっていますので、だからこそレッスンではそっちをお教えしたいのです。
無駄なギターのテクニックよりも(笑)
音楽が分かればわかるほどギターは楽になりますよ。

いずれにしてもギターでは3声あたりの対位法は弾けますが至難の業。実は2声でも厳格にやるのは大変です。
僕の演奏する対位法なんて、ほとんどこんな感じで弾いてますよ。
もちろんこれだけではなく、また別の機会に書く予定の

音を物理的につなぐよりも、音楽をつなぐ」これができれば一人前!

この考えが重要な役割を担うのですが、これはまたいずれ。

金谷幸三流花伝の書2

金谷幸三による実践ギター講座

■ギターって次の準備をしなくては何も弾けない楽器なんです、とほほ■

ギターは左右の手のポジション移動や形、つまり次にどこに向かって何をするか?、そのためにはどんな角度で入れば合理的か?
音をレガートにつなぐため、スムーズに音楽を流すため。とくに左指(左手)の事前準備はテクニックの最優先事項!とまで言い切っています。

ミスったり、いくら練習しても弾けない。その時はその弾けない音や個所ではなくそのひとつ前の形に問題があるのです。
わざわざ弾きにくい形で突入していませんか?準備をしましたか?
ほんとに一事が万事これに尽きます。

さてその「次に移る準備」のために最も必要なのが「指をフリーにする」つまり離すことです。
押さえないということは当然筋力的に楽になる、その間に指を休めることが出来るしテクニックのすべてに関わってきます。
ところが、この動作がある思い込みによって出来なくなってしまってることが多い。曰く、
「だって楽譜に音を伸ばせって書いてあるから、2分音符分伸ばせって書いてあるから!」

指を離せば音が切れる。だから離すわけにはいかぬ、ええい離してなるものか!
だってそういう風に教わったから。という思い込みです。

ただここで彼、彼女は大事なことを忘れています。
それはギターの音は「減衰して消えていくこと」。そうです、いくら押さえていようがいつか(すぐに)消えていく、それがギターの宿命なんです。
もう音は消えてますよ、だから離して大丈夫なんですよ。。。。
さぁさ音が鳴っていないのにいつまでも押さえているなんて力の無駄ムダ。さっと離して次の準備に取り掛かりましょう。

さて今回はそんな指をリリースするコツをいくつか紹介します。一つはギターの響きそのものに直結するすごく大切な知識ですので是非覚えておいてください。

1.共鳴音を利用する

試しに弾く弦以外をすべてミュートし、なおかつ表面板もミュートしたら、ギターってすごくチープな音しか鳴らない楽器ですよね。
つまりギターの響きの魅力はその音を彩る共鳴音と余韻だと、教室では言い続けています。
この共鳴音(多くはハーモニクス)はある音を弾くと同時に弱いながらもしっかりと鳴り続けるのが特徴です。

さて上図(でかっ!)にあるように、減衰していく実音が消えゆくポイントと共鳴音のサスティーンがクロスする瞬間、
よく聴いてください、この瞬間、音がふわっと膨らむのが感じられるはずです。このとき余韻の流れは滑らかに共鳴音へと移ったのです。
そこで、この時に押さえている指をさらにギュッと指板に押し込み、ふわっと月面を蹴るようにリリースしてみてください。
感じをつかむためには、よく共鳴する2弦の10フレット(ラ)で試してみてください、この時は4弦の7フレット、5弦の5または12のハーモニクスが共鳴してくれています。
いかがですか?音は指を離しても共鳴音に引き継がれていますよね。

これで指を離すことが出来ました。

2.同じ成分を利用する

次に、当たり前ですが同じ高さの音を違う弦で同時に鳴らした時(チューニングの時のように)、片方を止めてももう一つが鳴ってくれています。
実はそれに近いことがオクターブでもできるのです。なぜならオクターブの音どうしは共通する倍音成分を多く持っていて、ギターの余韻レベルだとほとんど同じ働きをしてくれるからです。
これを利用すると例えば伴奏アルペジオなどでオクターブ下の音、できれば上のパターンも考え共鳴しやすい音が出てきたタイミングで指を離すことができるのです。

まだまだいろんな技を使って指を離していきますが、ひとまずこの二つを使って次の曲の冒頭にチャレンジしてみてください。
早めに指を離しフリーにすることで次のポジション移動が楽になるという仕組みです。

まだまだ続きます!

金谷幸三流花伝の書1

金谷幸三による実践ギター講座

■僕のやってることはイリュージョン■

エスカルゴなギター教室の生徒さんには耳にタコができるほど聞かされてる言葉です。
そもそも私の根本に「ギターは不完全な楽器である」という考えがあります。
つまりメロディーも和音も弾けるけどピアノのように何でもできる楽器じゃないんだ、
そしてそれは欠点だとか逆にあえて美化する必要もなく、ただそういう楽器なんです。

だから基本「無理しない!」

もともと出来ないことを根性論で頑張るのではなく、どんな手を使ってもできたように見えたら(聞こえたら)それがすべて!という考えです。
もし聴こえる結果が同じならテクニック的に簡単なほうを選ぶ。
相手は機械じゃない、極めてファジーな「人間」が相手なのでごまかせばいいのです(言い方は悪いけど)。

ところがクラシックをやってる人は真面目な方が多いので例えば、
「楽譜に音を伸ばせと書いてあるので指を痙攣させながらも頑張って押さえています」。でも私のレッスンではそうじゃない!と説きます。
実際に伸びてなくても、音が伸びていたように聞こえ、人の記憶にそう認識させればいいんです。
で、楽をしてくださいと。さぼってくださいと。
例えるなら人体切断マジックでも本当に毎回アシスタントの女性を切断しないとお客さんは納得しないと思ってる、というか教え込まれてるんでしょうね。
怖い話です(笑)

繰り返しますが相手は人間です。脳は一つのことに集中すると周りをぼやけさせる習性があります。
それを利用して、無駄な労力をなくす。そしてテクニカルに余裕ができたソースを音楽表現に向かわせる。
手品の基本テクニック、ミスディレクション。これを徹底利用します。
目も耳もすべての五感で錯覚を起こすのが当たり前なんですよ。

イリュージョニストでいいのです

さてこのブログでこういったイリュージョンテクニックのいくつかを紹介していく予定です。
机上の空論ではない、実際に私の実践的基礎テクニックです。
文章だけでどこまで書けるかわかりませんがこうご期待。

音楽のレッスン2「誰かが言ってた」

ギターの世界にとどまらず一般にも言える「上辺だけの教育による理解の欠如」その思い込みについて何度かに分けて考えてみようと思います。

2.「調性感」

まるで都市伝説のようにまことしやかに語られることの多い「調性感」、例えば同じ長調でもニ長調は明るく繊細だが
ホ長調は高貴で堂々とした様子を感じる、とかいった例のあれですね。(文例は適当です)。

今回はその調性感に関する思い込みの例として分かりやすく「変ホ長調」を考えてみましょう。

巷間で「英雄の調」と呼ばれるこの調、フラットが3つも(!)あるのでギターでは馴染みが薄いためか、たまに出てくると嬉々として「英雄」を語り始めることがあります。「これは英雄の調と言ってね、凛としてそれこそ英雄らしく堂々と弾かなくちゃだめだお」みたいな。

確かにオーケストラではホルンなど金管楽器が鳴らしやすい調のため好んで使われて、なおかつ金管の堂々とした音が英雄の凱旋にはぴったりなのかもしれません。
ただそれはオケの話。
ギターではフラットによって一番なる開放弦、6本のうち4本、3分の2を封じられてしまう悪夢の調(笑)なんです。
つまり、一般的に語られる調性感っていうのは実は非常に楽器特有の事案なんですね。
楽器によって鳴りやすい響きは「力強さ、輝き」など、そうでないものは「平穏、安寧」へと向かうと考えればいいでしょう。

ギターでは低音に開放弦が利用できるAもしくはEとなりますが、Eが下方向からのドミナントによる終始が出来ないので、
イ長調が一番「華やかで輝き」イ短調が「深い直情的な悲しみ」に使われます。
ギターの世界ではAこそが英雄の調なのです。(ちょうどジュリアーニも英雄ソナタをAで書いてますし。)
一方Eは上方にサブドミナントがありますので派手なようでいて「アーメン終止」でおなじみの変格終止扱い、つまりどこか宗教的な優しさを内包してるのです。

ニ調は6弦をドロップDにした場合、無類の安定感を誇る重さが表現できますが、そうでない場合は逆に軽やかな響きになります。
もちろんこれらはあくまでも個人的な形容ですが、響きから判断すると当たらずも遠からずといったところでしょう。

ギターの場合、低音の開放弦の関係でイ長調をマックスに、フラット方向へ向かうにつれて穏やかになるということです。
実際に転調表現の折にはぜひ参考にしてみてください。

ちなみに僕の場合、何も調号が付かない「ハ長調」は「素朴で牧歌的な表現」になります。単純で何も考えない様が「童心」「田舎」に通じるからかもしれません。

というわけで、音楽の父バッハ(そんなお父さんを持った覚えはないけど)のBWV.998のプレリュード・フーガ・アレグロを原調がEsだからと言って「堂々と輝かしく」弾かないでください。
まず楽器が違いますし、英雄の調はベートーヴェン以降の呼び名ですし、そもそも当時は415チューニング、半音低いので。

余談ですが、昔、11弦ギターでバッハのシャコンヌをそのまま弾いたときに聴こえる「ヘ短調」の響きに違和感を持たれた方がいらっしゃいました。
ただギターは実は実音が記譜よりオクターブ低い移調楽器なので、普段から原曲を8度も下げて弾かれることの違和感はスルーだったみたいです(笑)

なにごとも実践臨床を伴わない知識にとらわれると本質を見失うというお話でした。